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「ゼロカーボンって何?」

白馬村は、2019年12月に「気候非常事態宣言」、2020年2月に「ゼロカーボンシティ宣言」をして、2050年に二酸化炭素排出量を実質ゼロにすることを目指しています。

ゼロカーボン達成に向けた基本方針等を協議している「白馬村再生可能エネルギー連絡協議会」の委員有志により「地域と暮らしのゼロカーボン勉強会」が立ち上げられ、2021年5月20日に第1回勉強会が開催されました。

第1回勉強会概要

日時:2021年5月20日(木) 18:00〜20:00
会場:白馬ノルウェービレッジ
参加者:約58名(会場24名、オンライン34名)

当日の様子

開会・趣旨説明

勉強会の発起人の代表として、白馬村再生可能エネルギー連絡協議会の副会長を務めるしくみ株式会社の石田幸央さんから勉強会の趣旨をお話いただきました。

「ゼロカーボン」とか「脱炭素」とかよく見たり聞いたりするようになりました。
白馬村も長野県も国も宣言してるらしいけど、そもそも脱炭素って何?実現できるの?という方も多いと思います。
わかっているようで、よくわからない。とってもたくさんの要素が複雑に絡んでいて、何が本当か、効果的か、どんなことをすれば良いのかわからないので、大人から子どもまでみんなで勉強しよう!という会をつくってみました。
まずは「ゼロカーボンって何?」というところから始めて、皆さんの地域から暮らしの中からできることを考えながら未来をデザインしましょう。
毎回出なくても大丈夫。予定が空いていて、参加できる人が、できるときに。
白馬で開催していますが、オンラインで全国・世界から参加することもできます。
第1回目は、パタゴニア白馬店の坪井さんから、「ゼロカーボンって何?」というテーマでお話いただきます。
みんなで基本を勉強しましょう!

石田幸央さん, しくみ株式会社

「ゼロカーボンって何?」

パタゴニア白馬の環境担当を務める坪井夏希さんから、そもそも「ゼロカーボン」というのは何なのかお話いただきました。

「カーボン」という言葉は一般的には「炭素」という意味ですが、ここでは地球温暖化の原因となる二酸化炭素などの「温室効果ガス」を指しています。

温室効果ガスのうち、二酸化炭素が全体の76%を占め、メタン、一酸化二窒素、フロンの順に排出量が多くなっています。(CO2換算ベース※)
※二酸化炭素を1とした場合、メタンは23倍、一酸化二窒素は296倍、フロンは最大で22,200倍の温室効果能力を有しているため、二酸化炭素を基準とするために係数を乗じて計算したものです。

日本では、温室効果ガスのうち二酸化炭素が9割以上を占めています。

国別の二酸化炭素排出量を見ると、年によって入れ替わりはありますが、中国、アメリカ、インド、ロシアに次いで、日本は第5位の排出大国となっています。

日本で排出される二酸化炭素のうち、発電所等から出されるエネルギー転換部門が40%、工場等の産業部門が25%、運輸部門が18%、業務その他部門が6%、家庭部門が5%程度となっています。

2020年の日本の電源構成は、石炭が28%、天然ガス(LNG)が35%、石油・その他火力が12%となっていて、全体の75%が何らかのものを燃やして電気を作っている状況で、多くの二酸化炭素が排出されています。

石炭火力やLNG火力による発電は、多くの二酸化炭素を排出します。

「地球温暖化は本当に起きているのか」と疑う人もいますが、データを見ると産業革命とともに石炭・石油のエネルギー利用が進み、温室効果ガスの増加と連動する形で地球の気温は上昇しています。

地球温暖化に関しては2019年11月に開催した「24 Hours of Reality in Hakuba」もご覧ください。

24 Hours of Reality in Hakuba
単独イベントとしては3回目となるミーティングは、以下の3本立てで開催しました。 「The Climate Reality Leadership Corps Tokyo Training」報告 白馬高校生から気候マーチの報告と…

hakuba-sdgs-lab.org

地球温暖化は中〜高緯度の地域で影響が大きいと言われていて、温暖化対策が実施されなかった場合、2100年には夏の最高気温が全国的に40〜44度くらいになり、雪不足や台風の巨大化・激化が進行することを環境省が予測しています。

先日、長野気象台の「平年値」が1981〜2010年から、1991〜2020年に変更され、気温は0.4度上昇し、降雪量は38%減少したと報道されていました。
白馬村でも温暖化の影響は既に表れていて、年によって上下はあるものの、気温上昇と降雪量減少の傾向が見られます。

世界的には、2015年にフランスで開催された第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)でパリ協定が採択され、産業革命以前に比べて世界の平均気温上昇を2℃より低く保ち、1.5℃に抑える努力をすることや、そのためにも21世紀後半に温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることが世界共通の長期目標として定められました。

パリ協定の根拠を示したIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)は、800人以上の科学者が参加し、科学的・技術的・社会経済学的見地から気候変動に関する情報収集・研究を進めています。

日本政府は2050年に二酸化炭素排出量実質ゼロを掲げ、先日「2030年に2013年度比で46%削減」を発表しましたが、「2050年に実質ゼロを達成すればいい」というものではなく、今もたくさんの温室効果ガスが大気に排出され続けていることを踏まえると、2030年に46%でも足りないくらいと言われています。

長野県では気候危機突破方針を策定するなど全国をリードする形で意欲的に取り組んでいて、「2030年までに6割減」という野心的な目標が先日発表されました。

白馬村では高校生による気候マーチなどが開催され、人口1万人足らずの小さな村ながらも気候非常事態宣言を全国で3番目に行ったということで国内にインパクトを与えました。

ゼロカーボン、カーボンニュートラル、CO2排出量実質ゼロなどいくつかの言葉が使われますが、明確な区別はありません。

温室効果ガスの排出を完全にゼロにすることはできませんが、森林吸収量を差し引いて「実質的にゼロにする」という考え方です。
森林や土壌による吸収、再生可能エネルギーの余剰分で相殺、カーボンクレジット(環境価値取引)といった仕組みもあります。

身近な二酸化炭素排出源として、電力・熱・交通などがあります。
ゼロカーボンを達成するために、どういった行動をしていくべきなのか、みんなで考えて活動していきましょう!

参加者からの意見・質問等

「家庭部門からの二酸化炭素排出量は全体の5%弱」という話があり、「家庭で頑張ってもあまり意味がないのではないか」と思う人がいるかもしれませんが、長野県では家庭部門からの排出が26%を占め、産業部門・業務部門と同程度の割合が家庭から排出されているため、家庭での努力も大切に積み重ねてほしいです。(長野県北アルプス地域振興局職員)

長野県北アルプス地域振興局職員

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